気候関連情報開示

サステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)の1つとして気候変動への対応を定め、気候変動が事業にもたらす影響を分析しております。

ガバナンス

<サステナビリティ体制図>

サステナビリティへの対応を経営上の重要な課題であると認識し、サステナビリティに関する課題に対応するため、「サステナビリティ委員会」(以下、「委員会」)を設置しております。委員会は原則3か月に1回以上開催し、サステナビリティに関する重要事項(マテリアリティ)について議論・検討を行い、その結果を経営戦略やリスク管理に反映しております。
委員会の活動内容については、開催の都度取締役会に報告を行い、監督を受ける体制を構築しております。
また、グループ内でサステナビリティの取組みの推進・強化を図るため、組織横断的なワーキンググループとして「サステナビリティ専門部会」(以下、「専門部会」という。)を設置しております。加えて、地域・お客さま向けの支援を強化するため、営業支援グループ内に「サステナビリティ支援室」を設置しております。専門部会及びサステナビリティ支援室は重要課題(マテリアリティ)毎に具体的な推進施策を企画・立案し、委員会に提言しております。

戦略

機会とリスク

気候変動に関する機会及びリスクについて、短期(3年程度)、中期(10年程度)、長期(30年程度)の時間軸で定性的な分析を行っております。

分類 主な機会/リスク 時間軸
機会 地域・お客さまへの伴走型支援による持続可能な地域社会の実現に資する投融資やコンサルティングサービスの提供などのビジネス機会の増加 短期~長期
気候変動に対する適切な取組みと開示による企業価値の向上 短期~長期
リスク 移行リスク 気候変動に対する規制強化や脱炭素社会への移行に伴うコスト負担増加及び消費者行動の変化によるお客さまの業績悪化に伴う与信関連費用の増加 中期~長期
脱炭素化などの気候変動問題に対する取組みが他社に劣後することによる企業価値の低下 短期~長期
物理的
リスク
急性
リスク
気候変動に起因する自然災害の増加により、お客さまの事業活動が中断・停滞し、業績が悪化することによる財務諸表の変化に伴う与信関連費用の増加 短期~長期
大規模な自然災害等によりお客さまの不動産等の担保価値が毀損することによる与信関連費用の増加 短期~長期
当行グループ拠点の被災に伴う営業活動の中断 短期~長期
慢性
リスク
平均気温の上昇や海面上昇に伴うお客さまの業績悪化、担保価値の毀損による与信関連費用の増加 中期~長期

シナリオ分析

  1. 移行リスク
    • 融資ポートフォリオにおけるリスク重要度評価の結果として「電力」セクターを選定
    • 地場資本の中小企業が多い福井県経済の特徴を捉えるため、「福井県内の中小企業※」を選定

    以上2つの分析対象セクターに関して、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)のネットゼロ排出シナリオを踏まえた分析を実施し、財務への影響度を算定しております。
    なお、過去に公表した数値より増加しておりますが、算定方法を見直したことによるものであります。

    • 中小企業の定義…
      日銀業種分類の定義により「中小企業」に分類される企業
    項目 内容
    シナリオ IEA/NZEシナリオ(1.5℃)
    分析対象 ①電力 ②福井県内の中小企業
    分析手法 炭素税が導入された場合のお客さまの費用増加や売上減少に伴う業績悪化
    対象期間 2050年まで
    分析結果 2023年度(福井銀行単体) 2024年度(福井銀行単体)
    移行リスク 与信関連費用増加額 最大21億円 与信関連費用増加額 最大12億円
  2. 物理的リスク
    • 異常気象(洪水)の影響による事業性貸出先の営業停止に伴う売上減少
    • 不動産担保の毀損などが発生した場合の与信関連費用の増加

    以上2つの事象について気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の代表濃度経路シナリオを踏まえた分析を実施し、財務への影響度を算定しております。

    項目 内容
    シナリオ IPCC/RCP8.5シナリオ(4℃)
    分析対象
    • 福井県内の事業性貸出先
    • 福井県内の不動産(建物)担保
    分析手法
    • 事業性貸出先の営業停止による売上減少に伴う業績悪化
    • 不動産担保の毀損
    対象期間 2050年まで
    分析結果 2023年度(福井銀行単体) 2024年度(福井銀行単体)
    物理的リスク 与信関連費用増加額 最大12億円 与信関連費用増加額 最大12億円
  3. 炭素関連資産
    セクター 2023年度
    (福井銀行・福邦銀行合算)
    2024年度
    (福井銀行・福邦銀行合算)
    エネルギー 1.46% 1.46%
    運輸 1.92% 1.92%
    素材・建築物 18.38% 19.55%
    農業、食料、林産物 1.58% 1.45%
    合計 23.33% 24.38%

気候変動に関する機会及びリスクに対する主な取組内容

2024年度の取組内容
①お客さまの脱炭素経営支援
  • ふくぎんサステナビリティ経営サポート融資「サステナ応援ローン」の取扱開始
  • 地域事業者向け脱炭素セミナーの開催
  • 脱炭素経営に関する企業間交流の実施
②地域の脱炭素化及びESGの取組みを推進するための枠組み作り
  • 環境省「持続可能な社会形成に向けたESG地域金融の普及・促進事業」支援先金融機関として採択(地域再エネ地産地消に向けた小水力発電の普及及び価値の共有知化事業)
  • 地方公共団体への環境省支援事業(「重点対策加速化事業」「脱炭素先行地域事業」)申請支援及び採択後の実行支援
③自社のCO2排出量削減
  • 新築店舗のNearly ZEB化
  • 一部の営業車の電気自動車への入替の継続実施
  • 気候変動に関する分析の高度化に向けたCO2排出量算定ツールの導入

リスク管理

当行グループは、気候変動に起因する移行リスク及び物理的リスクをグループ全体の事業・財務内容に影響を与える重要なリスクとして認識しております。シナリオ分析等の実施により当該リスクを識別・評価することで、信用リスク等に与える影響の程度や蓋然性を把握・分析するとともに、統合的リスク管理の枠組みにおける管理態勢の構築に取り組んでおります。
また、2023年6月に制定した「サステナブル投融資方針」では、地域社会の課題解決に資する事業等に積極的な支援を行うとともに、環境や社会にネガティブな影響を与える可能性のある事業等に対しての取組方針を定め、適切に対応を行っております。

指標と目標

  1. サステナブルファイナンス※
    グループ目標 実行額累計 1兆円
    対象期間 2022年度~2031年度
    2024年度実績 実行額累計3,329億円(前年度比+1,197億円)
    サステナブルファイナンスの定義
    サステナブルファイナンスは「サステナブル投融資方針」における「積極的に取り組む分野」に該当する以下の投融資を指します。
    1. 地域産業の振興と持続的な発展に寄与する事業
      基盤である福井県の経済の特徴を踏まえ、福井県内の中小企業向け事業性融資を集計しています。
    2. 省エネルギー・再生可能エネルギー事業及び脱炭素社会の実現に寄与する事業
      グリーンファイナンス、トランジションファイナンス等の国際基準に準ずる投融資及び再生可能エネルギー等の活用に資する融資を集計しています。
    3. 高齢化・少子化等の課題解決に寄与する事業
      医療、福祉、教育に携わる事業者に対する融資を集計しています。
  2. CO2排出量削減目標(Scope1、2)
    目標 2030年度までに2013年度比70%以上削減
    2050年度までにネット・ゼロ
    2024年度実績(グループ合算)
    (単位:t-CO2)
    2013年度 2022年度 2023年度 2024年度
    Scope1 901 616 568 553
    Scope2 ロケーション基準 6,159 3,296 3,133 2,989
    マーケット基準 5,312 2,353 2,250 2,090
    合計(Scope1+Scope2(マーケット基準)) 6,213 2,970 2,818 2,643
    2013年度からの削減率 - △52.2% △54.6% △57.4%
    CO2排出量(Scope1、2)の推移
    CO2排出量(Scope3)
    (単位:t-CO2)
    カテゴリー 2022年度 2023年度 2024年度
    1.購入した製品・サービス 6,045 6,813 7,475
    2.資本財 1,558 3,268 2,554
    3.燃料及びエネルギー関連活動 610 574 593
    4.輸送・配送(上流) 1,475 1,133 1,052
    5.事業から出る廃棄物 732 1,009 425
    6.出張 219 218 216
    7.雇用者の通勤 658 648 639
    15.投融資(ファイナンスドエミッション) (※)- 2,952,833 2,848,484
    合計 11,299 2,966,500 2,861,442

    (※)2022年度のカテゴリー15投融資(ファイナンスドエミッション)は、算定対象範囲及び算定方法の見直しに伴い、過去のデータの取得が困難であるため、算定対象外としております。

    CO2排出量(Scope3-カテゴリ―15投融資(ファイナンスドエミッション))の推計

    セクター・業種 2024年度
    排出量(t-CO2) データクオリティスコア 件数 算定対象投融資残高(百万円) 算定カバー率
    エネルギー 339,815 2.8 138 62,521 100.0%
    石油・ガス 45,704 3.4 81 11,619 100.0%
    石炭 - - - - -
    電力ユーティリティ 294,110 2.6 57 50,901 100.0%
    運輸 126,362 2.8 257 49,115 99.9%
    航空貨物 4,193 4.0 4 1,305 100.0%
    旅客空輸 835 4.0 4 47 100.0%
    海上輸送 6,953 2.4 3 946 100.0%
    鉄道輸送 6,980 2.2 6 8,712 100.0%
    トラック
    サービス
    87,524 4.02 206 19,276 99.7%
    自動車及び部品 19,874 1.8 34 18,826 100.0%
    素材・建築物 1,074,098 3.4 2,768 371,679 99.4%
    金属・鉱業 70,782 3.1 54 9,832 95.2%
    化学 86,995 2.1 113 39,410 100.0%
    建設資材 71,319 3.0 43 8,129 100.0%
    資本財 802,396 3.6 1,851 176,422 99.9%
    不動産管理・開発 42,604 3.5 707 137,883 98.9%
    農業・食料・林産品 133,254 3.5 293 28,862 100.0%
    飲料 3,499 4.0 27 2,643 100.0%
    農業 5,857 4.0 47 2,082 100.0%
    加工食品・加工肉 82,128 3.7 150 15,062 99.9%
    製紙・林業製品 41,769 2.7 69 9,073 100.0%
    その他 1,174,954 2.8 3,866 859,794 97.5%
    総計 2,848,484 3.0 7,322 1,371,972 98.3%
    CO2排出量(Scope1、2、3)の算定に関する詳細事項
    • CO2排出量(Scope1、2、3)の実績値について
      CO2排出量(Scope1、Scope2、Scope3)の実績値及び推計値が過去に公表したものと異なっておりますが、CO2排出量算定ツールの導入に伴い、算定対象範囲及び算定方法の見直しを行ったことによるものであります。
      具体的には、Scope1、2の算定対象範囲にグループ各社を追加したことにより、Scope1、2の実績値が増加しております。また、CO2排出量算定ツールの導入に伴い、排出原単位や算定手法等を変更したため、Scope1、2、3の実績値に増減がございます。
    • Scope3の算定対象範囲
      カテゴリー1、2、4、5、6、7は福井銀行単体、カテゴリー3はグループ合算、カテゴリー15は福井銀行・福邦銀行合算で算定しております。また、福井銀行単体において、カテゴリー8~14に該当する排出量はございません。
    • カテゴリー1、4、5の基本的事項
      当行で利用している経費管理システムから得られるデータを用いて、経費支出項目と算定要否を判断したうえで、カテゴリーごとに算定しております。なお、消費税は控除せずに算定しております。
    • カテゴリー1、2の排出原単位
      環境省が公開している「1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド」を参考に、サプライヤーの組織ベース排出量を総売上高で除したものを排出原単位としております。なお、1次データが取得できない場合は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」を利用して算定しております。
    • カテゴリー4、5、6、7の排出原単位
      環境省が公開している「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」を利用しております。また、排出原単位については、各支出項目に照らして最も適切と考えられるものを選定しております。
    • カテゴリー1「購入した製品・サービス」
      当行の経費管理システムにて管理されている経費支出項目のうち、CO2排出を伴う活動、かつ、他のカテゴリーに属さないものを抽出し、サプライヤー別の支払金額に排出原単位を乗じております。
    • カテゴリー2「資本財」
      各年度において取得した固定資産を抽出し、サプライヤー別の取得金額に排出原単位を乗じております。
    • カテゴリー3「燃料及びエネルギー関連活動」
      Scope1の算定に用いた燃料の使用量及びScope2の算定に用いた電力使用量に排出原単位を乗じております。
    • カテゴリー4「輸送・配送(上流)」
      経費支出項目のうち、郵便費及び輸送・配送にかかる費用に排出原単位を乗じております。
    • カテゴリー5「事業から出る廃棄物」
      経費支出項目のうち、廃棄物の収集費用・処理費用に廃棄物処理に係る排出原単位を乗じております。
    • カテゴリー6「出張」
      従業員数に排出原単位を乗じております。
    • カテゴリー7「雇用者の通勤」
      従業員数に営業日数を乗じたものに排出原単位を乗じております。
    • カテゴリー15「投融資(ファイナンスドエミッション)」
      PCAF(※)スタンダードの計測手法を参考に、2023年度より法人向け事業性貸出及び政策保有株式を対象としてファイナンスドエミッションの推計を行っております。具体的には、各事業法人の排出量をアトリビューション・ファクター(各事業法人の負債と自己資本の合計に占める当行グループ投融資残高)に乗じて、ファイナンスドエミッションを算定しております。1次データが取得できない場合は、産業連関表上の産業分類ごとの排出原単位を各事業法人の直近決算時点の売上高に乗じて、各事業法人の排出量を推定しております。
      お客さまのCO2排出量の開示拡大や算定対象範囲の拡大等により、今後算定結果が大きく変更になる可能性がございます。引き続き、お客さまとのエンゲージメントを通して、データクオリティスコアの向上に取り組んでまいります。 (※)金融向け炭素会計パートナーシップ(PCAF:Partnership for Carbon Accounting Financials):金融機関の投融資先の温室効果ガス排出量を整合的に算定するための枠組み

気候変動に関する分析を踏まえた取組方針

当行グループは、福井県内で50%以上の貸出金シェアをもつ地域金融機関として、炭素関連資産の集計や投融資によるCO2排出量(ファイナンスドエミッション)の推計を通して、福井県内の地域特性や経済の特徴を定量的に把握し、当行グループの投融資がCO2排出にどの程度影響を及ぼしているかを確認しております。
また、気候変動が引き起こす可能性のあるリスクを特定し、最終的に当行グループの与信関連費用への影響額を算定することで、リスク軽減のための戦略を策定し、実行に移してまいります。

日銀気候変動対応オペに関する開示

<2025年3月31日時点実績>
気候変動対応オペに該当する投融資はグループ合計563億円(福井:539億円/福邦:23億円)です。