気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応

2021年9月に賛同した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言※1に基づき、サステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)の1つとして「TCFDへの対応」を定め、気候変動が事業にもたらす影響を分析しております。

※1「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言
2015年12月、金融安定理事会(FSB)は、G20財務大臣及び中央銀行総裁の意向を受け、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を設立。
2017年6月、企業による自主的な開示を促すための提言をまとめた最終報告書を公表。提言は、金融セクターだけを対象としたものではなく、全ての企業が対象。

ガバナンス

<サステナビリティ体制図>

サステナビリティへの対応を経営上の重要な課題であると認識し、サステナビリティに関する課題に対応するため、「サステナビリティ委員会」(以下、「委員会」)を設置しております。委員会は原則3か月に1回以上開催し、サステナビリティに関する重要事項(マテリアリティ)について議論・検討を行い、その結果を経営戦略やリスク管理に反映しております。
委員会の活動内容については、開催の都度取締役会に報告を行い、監督を受ける体制を構築しております。
また、グループ内でサステナビリティの取組みの推進・強化を図るため、組織横断的なワーキンググループとして「サステナビリティ専門部会」(以下、専門部会)を設置しております。専門部会は重要課題(マテリアリティ)毎に具体的な推進施策を企画・立案し、委員会に提言しております。

戦略

気候変動に関する機会及びリスクについて、短期(3年)、中期(10年)、長期(30年)の時間軸で定性的な分析を行っております。

機会とリスク

分類 主な機会/リスク 時間軸
機会 お客さま、地域への伴走型支援による持続可能な地域社会の実現に資する投融資やコンサルティングサービスの提供などのビジネス機会の増加 短期~長期
気候変動に対する適切な取組みと開示による企業価値の向上 短期~長期
リスク 移行リスク 気候変動に対する規制強化や脱炭素社会への移行に伴うコスト負担増加及び消費者行動の変化によるお客さまの業績悪化に伴う与信関連費用の増加 中期~長期
脱炭素化などの気候変動問題に対する取組みが他社に劣後することによる企業価値の低下 短期~長期
物理的
リスク
急性
リスク
気候変動に起因する自然災害の増加により、お客さまの事業活動が中断・停滞し、業績が悪化することによる財務諸表の変化に伴う与信関連費用の増加 短期~長期
大規模な自然災害等によりお客さまの不動産等の担保価値が毀損することによる与信関連費用の増加 短期~長期
当行グループ拠点の被災に伴う営業活動の中断 短期~長期
慢性
リスク
平均気温の上昇や海面上昇に伴うお客さまの業績悪化、担保価値の毀損による与信関連費用の増加 中期~長期

シナリオ分析

  1. 移行リスク
    • 融資ポートフォリオにおけるリスク重要度評価の結果として「電力」セクターを選定
    • 地場資本の中小企業が多い福井県経済の特徴を捉えるため、「福井県内の中小企業※」を選定

    以上2つの分析対象セクターに関して、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)のネットゼロ排出シナリオを踏まえた分析を実施し、財務への影響度を算定しております。

    • 中小企業の定義…
      日銀業種分類の定義により「中小企業」に分類される企業
    項目 内容
    シナリオ IEA/NZEシナリオ(1.5℃)
    分析対象 ①電力 ②福井県内の中小企業
    分析手法 炭素税が導入された場合のお客さまの費用増加や売上減少に伴う業績悪化
    対象期間 2050年まで
    分析結果 2022年度(福井銀行単体) 2023年度(福井銀行単体)
    移行リスク 与信関連費用増加額 最大12億円 与信関連費用増加額 最大13億円
  2. 物理的リスク
    • 異常気象(洪水)の影響による事業性貸出先の営業停止に伴う売上減少
    • 不動産担保の毀損などが発生した場合の与信関連費用の増加

    以上2つの事象について気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の代表濃度経路シナリオを踏まえた分析を実施し、財務への影響度を算定しております。

    項目 内容
    シナリオ IPCC/RCP8.5シナリオ(4℃)
    分析対象
    • 福井県内の事業性貸出先
    • 福井県内の不動産(建物)担保
    分析手法
    • 事業性貸出先の営業停止による売上減少に伴う業績悪化
    • 不動産担保の毀損
    対象期間 2050年まで
    分析結果 2022年度(福井銀行単体) 2023年度(福井銀行単体)
    物理的リスク 与信関連費用増加額 最大10億円 与信関連費用増加額 最大12億円
  3. 炭素関連資産
    セクター 2022年度
    (福井銀行単体)
    2023年度
    (福井銀行・福邦銀行合算)
    エネルギー 1.92% 1.46%
    運輸 2.26% 1.92%
    素材・建築物 12.04% 18.38%
    農業、食料、林産物 1.77% 1.58%
    合計 17.99% 23.33%

気候変動に関する機会及びリスクに対する主な取組内容

2023年度の取組内容
①お客さまの脱炭素経営支援
  • CO2排出量算定サービスの拡充
  • <ふくぎん>サステナブルローンの取扱開始
②地域の脱炭素化及びESGの取組みを推進するための枠組み作り
  • 環境省の支援事業「地域におけるESG地域金融促進事業」「地域ぐるみでの脱炭素経営支援構築モデル事業」への参画
  • 環境省中部地方環境事務所と「脱炭素及びローカルSDGsの実現に向けた連携協定」の締結
③自社のCO2排出量削減
  • 新築店舗のNearly ZEB化
  • 一部の営業車の電気自動車への入替

リスク管理

当行グループは、気候変動に起因する移行リスク及び物理的リスクをグループ全体の事業・財務内容に影響を与える重要なリスクとして認識しております。シナリオ分析等の実施により当該リスクを識別・評価することで、信用リスク等に与える影響の程度や蓋然性を把握・分析するとともに、統合的リスク管理の枠組みにおける管理態勢の構築に取り組んでおります。
また、2023年6月に制定した「Fプロジェクト サステナブル投融資方針」では、地域社会の課題解決に資する事業等に積極的な支援を行うとともに、環境や社会にネガティブな影響を与える可能性のある事業等に対しての取組方針を定め、適切に対応を行っております。

指標と目標

  1. サステナブルファイナンス※
    グループ目標 実行額累計 1兆円
    対象期間 2022年度~2031年度
    2023年度実績 実行額累計2,131億円(前年度比+1,121億円)
    サステナブルファイナンスの定義
    サステナブルファイナンスは「Fプロジェクト サステナブル投融資方針」における「積極的に取り組む分野」に該当する以下の投融資を指します。
    1. 地域産業の振興と持続的な発展に寄与する事業
      基盤である福井県の経済の特徴を踏まえ、福井県内の中小企業向け事業性融資を集計しています。
    2. 省エネルギー・再生可能エネルギー事業及び脱炭素社会の実現に寄与する事業
      グリーンファイナンス、トランジションファイナンス等の国際基準に準ずる投融資及び再生可能エネルギー等の活用に資する融資を集計しています。
    3. 高齢化・少子化等の課題解決に寄与する事業
      医療、福祉、教育に携わる事業者に対する融資を集計しています。
  2. CO2排出量削減目標(Scope1、2)
    目標 2030年度までに2013年度比70%以上削減
    2050年度までにネット・ゼロ
    2023年度実績(福井銀行・福邦銀行合算)
    (単位:t-CO2)
    2013年度 2022年度 2023年度
    Scope1 797 522 496
    Scope2 5,240 2,294 2,200
    計(Scope1+Scope2) 6,038 2,817 2,697
    2013年度からの削減率 - △53.3% △55.3%
    CO2排出量(Scooe1、2)の推移
    CO2排出量(Scooe3)
    (単位:t-CO2)
    2022年度
    (福井銀行単体)
    2023年度
    (福井銀行・福邦銀行合算)
    カテゴリー6 出張 - 192
    カテゴリー7 雇用者の通勤 - 2,762
    カテゴリー15 投融資
    (ファイナンスドエミッション)
    (※)609,752 1,037,282

    (※)2022年度のファイナンスドエミッションの推計対象は事業性貸出のみ

    CO2排出量(Scope3-カテゴリー15投融資(ファイナンスドエミッション))の推計

    PCAFスタンダードの計測手法を参考に、事業性貸出及び政策保有株式を対象として、炭素関連セクター18業種に分類してファイナンスドエミッションの推計を行っております。
    今後、お客さまとのエンゲージメントを通して、CO2排出量算定範囲の拡大やデータクオリティスコアの向上に取り組んでまいります。

    セクター・業種 2023年度
    炭素強度
    (t-CO2/百万円)
    投融資残高(百万円) 排出量(t-CO2)
    エネルギー 20.54 36,750 2.50% 354,157 34.14%
    石油・ガス 0.85 9,485 0.65% 20,626 1.99%
    石炭 - - 0.00% - 0.00%
    電力ユーティリティ 27.38 27,265 1.86% 333,531 32.15%
    運輸 1.66 47,207 3.22% 78,077 7.53%
    航空貨物 - - 0.00% - 0.00%
    旅客空輸 9.28 9 0.00% 93 0.01%
    海上輸送 9.78 1,010 0.07% 4,651 0.45%
    鉄道輸送 0.18 13,527 0.92% 557 0.05%
    トラックサービス 2.44 26,489 1.81% 71,042 6.85%
    自動車及び部品 0.23 6,169 0.42% 1,733 0.17%
    素材・建築物 0.51 451,620 30.77% 225,641 21.75%
    金属・鉱業 0.88 17,908 1.22% 14,901 1.44%
    化学 2.13 36,713 2.50% 72,559 7.00%
    建設資材 8.51 8,241 0.56% 72,965 7.03%
    資本財 0.25 162,438 11.07% 58,648 5.65%
    不動産管理・開発 0.11 226,317 15.42% 6,566 0.63%
    農業・食料・林産品 0.92 39,230 2.67% 30,976 2.99%
    飲料 0.32 1,603 0.11% 265 0.03%
    農業 3 1,440 0.10% 2,228 0.21%
    加工食品・加工肉 0.51 23,579 1.61% 12,737 1.23%
    製紙・林業製品 1.54 12,606 0.86% 15,745 1.52%
    その他 1.1 892,688 60.83% 348,428 33.59%
    総計 1.42 1,467,496 100% 1,037,282 100%
    Scope3の算出方法
    • カテゴリー6及び7の算定について
      当行で利用している経費システム及び人事システム上のデータを用いてカテゴリーごとに算定しています。
      消費税は控除せずに算定しています。
      排出原単位は環境省が公表している「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」より、各項目について最も適切と考えられるものを選定し適用しています。
    • カテゴリー6 出張
      経費システム上の支出項目「出張旅費」の支出金額に、交通手段毎の排出原単位を乗じる方法で算出しています。実態面を考慮し、海外出張は旅客航空機(国際線)、国内出張は旅客鉄道の排出原単位を使用しています。
    • カテゴリー7 雇用者の通勤
      人事システム上の「通勤手当」の支給金額に、交通手段(鉄道、バス、自動車)毎の排出原単位を乗じる方法で算出しています。鉄道及びバス通勤の場合はそれぞれ旅客鉄道、バス(営業用乗合)の排出原単位を使用しています。自動車通勤の場合は、資源エネルギー庁が公表している2023年度の福井県のガソリン平均金額とガソリン燃焼時の排出原単位を用いて作成したガソリン代支給額に対する排出原単位を使用しています。
    • カテゴリー15 投融資
      PCAFスタンダードの計測手法を参考に、事業性貸出及び政策保有株式を対象としてファイナンスドエミッションの推計を行っております。
      具体的には、環境省「グリーンバリューチェーンプラットフォーム」にて公表されている炭素関連セクターに紐づく18業種ごとの炭素強度を各事業法人の直近決算時点の売上高もしくは総資産額に乗じて、各事業法人ごとの総排出量を推定しています。その推定結果をアトリビューション・ファクター(各事業法人の負債と自己資本の合計に占める当行投融資残高)に乗じて、ファイナンスドエミッションを算定しています。
      事業法人ごとの排出量=業種ごとの炭素強度×事業法人ごとの売上高×アトリビューション・ファクター(事業法人ごとの当行融資の寄与度)
      データクオリティスコアは4~5相当です。

気候変動に関する分析を踏まえた取組方針

当行グループは、福井県内で50%以上の貸出金シェアをもつ地域金融機関として、炭素関連資産の集計や投融資によるCO2排出量(ファイナンスドエミッション)の推計を通して、福井県内の地域特性や経済の特徴を定量的に把握し、当行グループの投融資がCO2排出にどの程度影響を及ぼしているかを確認しております。
また、気候変動が引き起こす可能性のあるリスクを特定し、最終的に当行グループの与信関連費用への影響額を算定することで、リスク軽減のための戦略を策定し、実行に移してまいります。

日銀気候変動対応オペに関する開示

<2024年9月30日時点実績>
気候変動対応オペに該当する投融資はFプロジェクト合計558億円(福井:533億円/福邦:25億円)です。